👤「ヘミング曲げを使うとどんないいことがあるの?」
👤「実際どんな場面でヘミング曲げって有効なの?情報を知りたい」
ヘミング曲げは板金のエッジ対策だけでなく、高級感のある仕上がりや強度アップにつながる曲げ加工技術です。しかし、加工工程が増えるためコストと製品への付加価値のバランスの見極めが重要です。
この記事を読めばヘミング曲げのメリット・デメリットから、ヘミング曲げを有効に活用する方法まで分かります。設計で製品の差別化を図りたい方は、ぜひ最後まで読んでいってください。
「ヘミング曲げ」は板金の180度曲げ

ヘミング曲げは折り返し曲げ・はぜ折り曲げとも呼ばれる曲げ加工方法の一つです。板金の端面を180度折りたたむように曲げます。ヘミング曲げを使えば、ユーザーや作業者が手を切るリスクを減らすことができるため、「人が直接手を触れる部分」によく使われます。
たとえば、家電製品の操作パネル、自動車のドアの縁、ステンレス製の家具や店舗什器の角など、私たちの身の回りの製品はこうした設計者・加工業者の配慮によって守られているのです。
ヘミング曲げのメリット

安全対策になる
一般的に、板金の端面はシャーリングやプレス加工によってバリ(カエリ)と呼ばれる「エッジ」ができます。エッジとは指をすべらせると血が出るほど鋭利な端面のことです。そのままでは手を切る危険があるため安全対策が必要です。
そこで登場するのがこの「ヘミング曲げ」。板金の端面を180度折り返して鋭いエッジを内側に巻き込みつぶすことで、物理的にユーザーがエッジに触ることができなくなります。ケガのリスクを下げることができるため、製品を使う人や組み立て作業を行う人にとって安心感につながります。
特に以下の場面でヘミング加工が有効です。
| 項目 | 注意点 |
| ●【Who】誰がさわるか | 子どもや高齢者が触る場所 |
| ●【When】どんな状況でさわるか | 日常使用で触る場所や、掃除やメンテナンスで触る場所 |
| ●【How】どんな動作でさわるか | 力を入れて触る場所や、移動させるときに触る場所 |
ヘミング曲げは製品の外側の部分だけでなく、内部でも使われています。たとえば、電化製品の内部には配線が張り巡らされています。わずかな被覆で保護されただけの「か細い配線」は、板金のエッジでダメージを受けるリスクにさらされています。配線に擦れやキズが生じれば、故障や感電の原因になります。
ケガや故障に対して、ヘミング曲げは根本的なリスク回避策になるため、製品の信頼性を確実に高めることができます。長期的な品質維持、会社のブランド価値を守るために、設計者にはこうした細やかな配慮が求められます。
高級感がでる
ヘミング曲げのメリットは安全対策だけではありません。製品の外観をより美しく、上質に見せる効果もあります。エッジを内側に折り返して滑らかに仕上げるため、切断面やバリが表面に現れず、ラインに一体感が生まれます。見た目も、手触りも洗練された印象を与えることができます。シャープすぎず、どこか柔らかさを感じさせる仕上がりが製品に高級感を与えるのです。
高級感の演出に有効なシーン
| 事例 | ヘミング曲げの効果 |
| ● 家電製品の操作パネル | なめらかで、使い心地が良くなる。高級感を与える。 |
| ● 自動車のドアの縁 | ボディ全体の一体感が増す。細部の仕上がりが上質な印象を与える |
| ● ステンレス製の家具や店舗什器 | 金属特有の「鋭さ・冷たさ」がなくなる。見た目の安心感と洗練された印象を与える。 |
ヘミング曲げは安全性を高めるだけでなく、製品の印象そのものを変えることもできる加工方法です。高級感のある製品づくりにおいて欠かせない技術と言えます。
ヘミング曲げのデメリット

コストがかかる
ヘミング曲げは、一般的な曲げ加工よりも工程が多いため、そのぶん加工コストが高くなります。特に大量生産やコスト重視の製品においては注意が必要です。主な加工方法は、形状の複雑さに応じて「2工程曲げ」と「3工程曲げ」の2つがあります。
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2工程よりも3工程の方が手間がかかるため、コストも上がります。できるだけコストを抑えたい場合は、形状をシンプルにして2工程で加工できるように設計する必要があります。部品形状の簡素化と、部品に求められる機能のバランスを取り、最適な加工方法を選びましょう。
仕上がりが不安定
ヘミング曲げには多くのメリットがありますが、仕上がり面で注意すべき点もあります。ひとつは「塗装やメッキの割れ」です。プレコート鋼板やメッキ鋼板など、表面処理された素材を折り返すと、曲げによって材料が引き伸ばされ、塗膜にひび(クラック)が入ることがあります。
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塗膜・メッキのひび割れは、見た目の美しさや耐久性が求められる製品では、致命的な欠陥になります。
「寸法精度のばらつき」にも注意が必要です。ヘミング曲げは複数の工程を経て仕上げるため、わずかな加工ズレが最終寸法に影響を及ぼします。高い寸法精度が求められる部品の加工には適していません。こうしたトラブルを避けるためにはテストピースを使い、事前に問題の洗い出しと検証をすることが品質を守るカギとなります。
ヘミング曲げの活躍シーン|人と製品にやさしい設計へ

家電製品や自動車でのヘミング曲げ活用例
家電製品の操作パネルや、ステンレス製の家具の角などは、私たちが日常的に手を触れる機会が多く、ちょっとした不注意で指先を切ってしまうリスクがあります。鋭利なエッジがそのまま残っていると、ユーザーに不安を与えてしまいます。
自動車のドアやボンネットの縁も同様に、乗り降りや開閉のたびに手が触れる場所です。こうした箇所にヘミング曲げを施して、滑らかな形状に仕上げておくことで、ケガのリスクを取り除くことができます
高級家具や店舗什器でのヘミング曲げ活用例
ヘミング曲げは、安全性や機能性だけでなく、製品の「見た目の質」を高めるためにも活用されています。金属の端面を折り返して処理することで、切断面が外から見えなくなり、表面に滑らかなラインと一体感が生まれます。その仕上がりは、どこか柔らかく上品な印象を与え、製品全体に高級感をプラスしてくれます。
たとえば、高級家具、店舗什器など、外観のデザイン性が重視されるシーンでよく用いられます。角のシャープさを残しつつ、手触りはなめらか。そのバランスがデザイン性と機能性の両立を可能にしています。細部にまで配慮された加工は、製品の完成度を一段引き上げ、ブランド全体のイメージ向上にも貢献します。
まとめ:ヘミング曲げの特徴を理解して製品を差別化しよう

ヘミング曲げは、金属の端を180度折り返して仕上げる加工方法です。このひと手間を加えることで、ケガや配線へのダメージに対するエッジ対策ができるだけでなく、見た目の美しさや耐久性も向上します。手に触れてもケガをしにくいやさしい形状、仕上がりの高級感、さらには強度アップなど、製品づくりにおいてヘミング曲げは多くのメリットをもたらしてくれます。
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