「曲げ加工のコストを抑えたい」
「コストを抑えるコツが知りたい」
金属加工の基本となる曲げ加工は、あらゆる工業部品に使われています。
1回の曲げにかかるコストは小さくても、曲げ回数、部品点数を積み重ねるとバカにできないものです。
今回は金属加工の王道、曲げ加工の見積もりが決まる仕組みから、コストを抑えるコツまで解説します。
この記事を読めば、設計のときどのようなことに注意すればいいのかが分かるようになります。
ぜひ最後まで読んでいってください!
曲げ加工の見積もりはどう決まる?基本の仕組みを解説
曲げ加工は、金属やプラスチックなどを特定の角度に折り曲げる加工方法で、製造の現場で多く利用されています。
これまでは業者の言い値のまま製品を注文していた、なんて人も多いのではないでしょうか。
見積もりの仕組みを理解することで、コストを最小限に抑えることができるようになります。
曲げ加工の見積もりがどのように決まるのか、その基本的な仕組みを見ていきましょう。
1. 材料費
使用する板材の種類や厚み、サイズによって材料費は変わります。
一般的な材料には、鉄、ステンレス、アルミ、銅などがあります。
ステンレスやアルミは加工性が異なり、材料コストが変動しやすいため、設計段階で最適な材料を選ぶことが重要です。
2. 加工費
加工費は、曲げの回数や角度、加工の難易度によって決まります。
たとえば、90度曲げよりも複数回の曲げが必要な複雑な形状のほうが、コストが高くなります。
精度が求められる部品の場合は、専用設備や熟練技術者のノウハウが必要になるため、加工費が上がることもあります。
3. 金型費用
特定の形状を曲げるためには、専用の金型が必要になることがあります。
ブレーキプレスなど一般的な曲げ加工では汎用金型を使用しますが、複雑な形状、特に高い精度が必要な部品の場合、新規の金型を製作する必要があり、多額のコストがかかります。
試作品や少量生産の場合、金型費用の負担が大きくなることに注意が必要です。
4. 表面処理費
曲げ加工後に塗装やメッキ処理を施す場合、追加のコストが発生します。
防錆や耐久性向上のために表面処理が必要な場合は、その費用を考慮して見積もりを取ることが重要です。
一般的な表面処理には、粉体塗装、電解研磨、アルマイト処理などがあります。
5. 数量とロット
一般的に発注数量が増えると、1個あたりの単価が下がるスケールメリットが生まれます。
材料のロスが減り、機械の段取り時間が分散されるためです。
少量生産の場合は割高になりやすいので、大ロットでの発注が可能ならコストを抑えられます。
6. 納期
納期は材料の調達時間と加工時間によって決まります。
一般的な材料であれば加工業者が在庫を持っているケースが多いですが、特殊な材料の場合は注意が必要です。
基本的に加工時間は形状によって決まるため、短納期を求める場合は、自社の依頼を優先して実施してもらうための交渉が必要です。
その場合は、特急料金が発生する可能性があります。
特に繁忙期では、通常よりも高い料金での対応になることがあるため、事前に納期の調整を行い、余裕を持ったスケジュールを立てることがコスト削減につながります。
曲げ加工の見積もりは、材料費、加工費、金型費用、表面処理費、発注数量、納期など多くの要素によって決まります。
これらを理解し、状況に応じた選択を行うことで、コストを最適化することができます。
曲げ加工の見積もりをおさえるコツ
1. 無駄な曲げを減らす
曲げの回数が増えるほど、加工費は高くなります。
例えば、1回の90度曲げならコストは抑えられますが、曲げの回数が多いと、段取りやプレス回数が増え、時間もかかります。
設計段階では、できるだけシンプルな形状を目指すことで、加工費が削減できるでしょう。
2. 一般的な材料を選ぶ
特殊な材料は、加工難易度が上がり、材料費も高くなる傾向にあります。
例えば、チタンのように一部の特殊な材料は加工が難しく、追加の工程が必要になることもあります。
鉄やステンレス、アルミなど一般的に流通している材料を選ぶことで、コストを最適化できます。
3. 必要な公差を設定する
寸法公差を過度に求めると、加工費が上がります。
例えば、±0.1mmの公差が必要な場合と、±0.5mmの公差で済む場合では、加工コストに大きな差が出ます。
加工業者とコミュニケーションを取り、機能上問題のない範囲で公差を緩めることで、安く、早く仕上がります。
4. まとめ発注をする
少量生産は、材料費や段取りコストの影響を大きく受けるため、割高になりがちです。
まとめて発注することで、1個あたりの単価を抑えられます。
特に、試作段階で発注量を調整することで、全体のコスト削減につながるでしょう。
どうしても一度にまとめ発注ができない場合でも、再発注(リピート発注)であれば、割安に加工してもらえる事例が多いので加工業者に相談してみるのもいいかもしれません。
5. 加工業者と早めに相談する
設計段階で加工業者と相談し、コストを抑えるために意見交換をするのが有効です。
加工現場の視点から、無駄のない設計やコストダウンの提案をもらえるケースも珍しくありません。
設計者側はコストを抑えることができ、加工者側は早く業務を捌けるため、Win-Winの関係になれるでしょう。
納期・品質・対応力をチェック
見積もり時には、単に価格を比較するだけでなく、納期、品質、対応力の3つの要素を忘れずに確認しましょう。
特に、納品後のトラブルを防ぐためには、これらの情報を事前に収集することが重要です。
1. 納期の確認
部品の納期が遅れると、開発スケジュールに影響を及ぼします。
たとえ設計途中であっても、仮図面やCADのデータを加工業者に送付し、おおまかな納期を確認しておくと良いでしょう。
加工業者によって繁忙期は異なるため、早めの情報提供をおすすめします。
優良な加工業者であれば、お客様の希望に応じて柔軟に対応してくれるはずです。
2. 品質の保証
品質レベルが期待していたものと違うと、修正が必要となり、結果的にコストが増加します。
発注前に、過去の実績やサンプルを見せてもらうと安心です。
検品票の有無や、検査体制が整っているかもチェックしておきましょう。
特に高い精度が求められる部品の場合は、寸法検査結果の添付を依頼することも可能です。
しかし、この場合はコストも高くなるため、製作する部品に求める品質レベルを基準に判断することになります。
3. 対応力のある業者を選ぶ
設計変更や、急な追加注文に柔軟に対応できる業者を選ぶことも重要です。
試作品や特注品を発注する場合は、コミュニケーションがスムーズな業者を選ぶことで、納期の遅延や品質トラブルを防ぐことができます。
質問や問い合わせへの応対、担当者の加工知識、過去の取引実績を参考に、信頼できる業者を選びましょう。
まとめ
今回は曲げ加工の見積もり、コストをおさえるコツと言うテーマでお話しました。
曲げは「打ち抜き」と並び、金属加工の最も基本と言える加工技術です。
周りを見渡してみても、あらゆる工業部品には「曲げ」が使われていることがわかります。
今回の記事の内容を、ぜひご自身の設計に取り入れてみて下さい。
何気なく部品を眺めているだけでも、様々な工夫がされていることがわかり面白いものですよ!
平板からパイプまで、曲げ加工でお困りの際はリョーユウ工業まで!
その他、溶接、レーザー加工等、板金加工のことなら何でもご相談ください。
金属加工の豆知識一覧に戻る